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ロメオのところへ着いた。しかし、意識が同調しない、外から眺めている感じ。
「カレン。しばらく待ってくれ。もうすぐだ」
ロメオは呟くと、書き物を続ける。いつも恋する女性を思ってはいるらしい。
「会いたいなら、会えば良いのよ。男でしょうが」
私は思わず声をかけた
「なんだ。なにか、お告げみたいな声が」
声は届いたらしい。それなら何とかできる。
「わたしは小百、いや、サリーというものだ。たまに息抜きも必要だぞ」
ここは、背後霊を信じる世界だから、上から目線で大きな存在を演じたい。
「サリー? あの伝説にある魔法使いのアニメか」
「想像に任せよう。それより、何を急いでいる」
「休暇を取るためだ。その分の仕事を急いでいる。サプライズで、ひと月ほど、カレンと旅行をするつもりだ」
「女は寂しいんだけどねー。サプライズなら、それもありか」
これは秘密にして、カレンを驚かせるのが良いと思う。
「仲人は王子様がなさる。カレンは公爵家だし、相応しいのは王家だ。私としてはカレンと一所になれば、仰々しいのは苦手なんだが」
侯爵令息でも庶民的な感覚を持っている。
「分かったわ。もう邪魔はしないからね」
カレンもしばらくは待つしかないと思う。
「ありゃー!」
ロメオが叫ぶ。イケメンで沈着冷静なイメージが壊れる。
「どうした?」
「スペルを間違えた。書き直しだー!」
「幾つだ。すぐ終わるだろうに」
「署名に令嬢と書いてしまった。すべて書き直しだー」
消しゴムや修正液もないし、そういう書き直された公式文書は誤解されるだろう。
「あなたは侯爵令息でしょうが。いつもカレンのことを考えているからでしょ」
ここで、良い機会だと気づいた。
「息抜きも必要だよ。恋人とデートするとか」
ロメオも考えるようにしてうなづく。
「そうだ。カレンと会おう。いつも心を安らげる。俺には必要なんだ」
「だから、会いたいときに会えばいい」
なんとかうまくデートへ持って行けそうだ。
私は若いころのラブラブいちゃいちゃドキドキを体験したい。ロメオとカレンが早くそういう状況になるのを期待していた。
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