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広場にあるテラス。今は公爵令息の洒落た服を着るロメオと会うカレンは心臓が高鳴る。
(なにかあるよね。どうしよう)
~もう決めてるんでしょ~
(やっぱり、お部屋でキスするのかしら。ここで。いやだー)
~嫌なの?~
なにか想像して、いやだー、と言っている。べつにキスが嫌いなわけではないのも知ってるけど、突っ込みを入れたかった。
(ちがうの。そろそろねー。ここでちょっとだけ)
婚約もしているし、人目をはばかることもないと考えている。
「どうしたんだい」
ロメオが顔を近づける。
「ちょっとね。幸せよ」
「俺もだよ。これから、静かな場所へ行こう」
「そうですね。あの。ロメオ、好き」
「おれも、カレンが好き。おいで」
ロメオがカレンの髪へ手をやり、引き寄せる。
~あわわ。顔が近ずく~
「良いよ」
カレンは練習したように、唇を緩く開けて目を閉じた。
このドキドキ感に私もめまいがする。キスされたら気絶しそうだ。
「いたわね」邪魔する声はジュレアン。
馬車から降りて立っていた。
「何の用事。いまはプライベートなの」
カレンは不機嫌にジュレアンへ言う。
人の恋路を邪魔するのは馬に蹴られちゃえと思う。
「決闘よ。勇者シーモベに勝てるかしら」
ジュレアンは背後に居た騎士の手を引っ張って前へ連れて来る。
「シーモベ。ロメオ様へ決闘の宣言をして」
「はい。ロメオ様。王女様の願いにより決闘を申し込みます」
「わからないなー。そんな理由か」
ロメオは呆れたように言う。しかし、カレンが乗り気だ。
「ジュレアン。もう我慢ならないわ。決闘よ」
立ち上がる。いやいやいや、相手がちがうといいたい。
「カレンお姉ちゃん。決着をつけるときだわ」
二人だけが乗り気らしい。それで、シーモベとロメオも、仕方ないか、というように顔を合わせてうなずいた。
なんなんだ。カレンの深いところの意識まで遡ってみた。
~いちどは大喧嘩したほうがいいかもね~
私は納得する。少なくともラブラブいちゃいちゃドキドキは後回しになった。
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