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王宮の裏庭でロメオとシーモベが距離を取って向き合う。エブリスタンツ王と家族や招待客が遠巻きにする。
ジュレアンは高々と宣言した。
「長年の鬱憤を晴らすときがきた。両者とも正々堂々と立ち合いなさい」
「なんの鬱憤なのさ」
カレンがジュレアンへ近づき問う。
「なによ。カレンお姉ちゃんは自由恋愛してるでしょ。私も自由になりたいの」
「私も魔女の森で試練を受けたのよ。ジュレアンもやってみれば」
「そういう危ないことを、誰もさせないでしょ。私は王女なの」
「そんなの捨てちゃえ。勇気がないんだわ」
「なにさ。自分だけ大人になって、カレンお姉ちゃんはずるいんだから」
「背伸びしないの。良い子にしてねジュレアンちゃん」
「ちゃんじゃない!」
「それじゃ。私をお姉様とお呼び」
おいおいおい。義姉妹の口喧嘩になってしまった。
私の場合はどうだったのだろうか。この世界よりは自由だったと思う。それでも剣道を私自身が選んだんだ。
~人生を賭けたような恋だな。私にはなかった~
「うん。賭けてるかも。そうだ。ジュレアンちゃんも命を賭けて惚れた人をみつけたら」
「それぐらい。どこかにいるわよ。それまでカレンお姉ちゃんはどこへもいくな」
「わがままな。もう遊ぶ歳じゃないの」
「また大人ぶっている。許さないから」
なんだ。あれか。私はカレンの潜在意識にあったモノを確信した。
~昔は二人でいちゃついていたんだよね~
「もう卒業よ。といってもジュリアンちゃんには無理かしら」
「また子ども扱いする」
距離を縮めたジュリアンとカレン。取っ組み合いを始めてしまった。私がなにかする状況でもないが、若いころの心の葛藤だと気づく。
私は剣道に惚れたのかもな。悔いはない人生だったんだ。おまけみたいに、ラブラブいちゃいちゃドキドキも経験したい。
家や古い規則に縛られたジュリアンの思いは良くわかる。
しかし、根底にあるのが、義姉への恋らしい。これは一度、ぶつからないと収まらないことだろう。剣道へ私がのめり込んだように。
~いきつくまでいっちゃえ。なにか違った未来がみえてくる~
カレンも、この関係に決着をつけたいらしい。私は彼女の人生も背負っているわけだ。異世界転生させてもらったのには、なにか深い理由もあると気づいた。
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