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四話 平和
サクモンに後は任せた状態の俺等は、一旦美蝶達の元に戻ることにした。
待ち合わせ場所である、組織の建物の一階にあるラウンジに向かう。
…にしても面子が濃いな。
怖〜い美形が二人も俺の後ろを歩いてら。
「…おい慧、手前何か失礼なコト考えてんじゃねェn」
「あぁ〜ラウンジで何を飲もうっかなぁ〜」
「誤魔化すなこのヤロウ」
「はぁ…」
…賑やかだなあ。アハハ。
「あ、慧来た〜」
「ほんとだ」
「慧ーーー!!!!」
「あ〜うるさいうるさい!美蝶!」
美蝶は俺を見ると物凄くうるさくなる。俺が彼女の視界に入る前は割と大人しいんだけど…。懐かれてるってやつ?
一応これでも美蝶って今年で19歳のハズなんだけどな…。
「なによ慧w」
「美蝶…君は緊張感というものは…」
「えー?w」
美蝶はおかしいようにくすくす笑う。どこに笑う要素あるんだよ。
「ほらほら慧ぃ〜、ギスギスしてないで、飲み物でも飲んだら?」
「みもざ…」
みもざがなだめるように、俺と美蝶の間に入る。
そしていつもの癒し系の笑顔で微笑みながら、お茶を差し出してくれた。それを素直に受け取ると、今度は空いているソファに誘導してくれる。
毎回思うけど、気遣いのプロだよね君。全ての行動が自然だし。
ふと横を見れば、華澄とあやめも、柊樂と星芹に飲み物を手渡している。
「柊樂さんと星芹さんも。報告聞きに行ってたんですよね?お疲れ様です」
「これ、ミルクティーとコーヒーだよっ!」
「ありがとなー、華澄、あやめ」
「ありがとうございます」
流石にあの二人も、華澄とあやめ相手だと素直だな…。
立場以上に、オーラから厳つい二人(見た目は結構スラッとしててイケメンだけど)に懐いてる部下なんて、指で数えられるほどだもんな。
俺も他人の事言えないけどさ。
でも柊樂と星芹とはまた違うし。
「…慧?」
「慧、貴方また___」
「んでサクモンからの報告についてなんだけど」
「話遮んなクソヤロウ」
「全くですね」
はいはい無視無視。
任務が先ですよ〜っと。
「火柱事件のことだったんだけどさ…___」
サクモンからの報告を、手短に美蝶達に話す。
他の部下は?って?そこはまた別の手段で報告済み。電子メールってヤツ。腕時計型の連絡装置でね。
「へぇ〜…そうだったんだねぇ」
「じゃあ、これから犯人探しが始まる感じ?」
「そうだね。まだGOATと関わりが無いとは言い切れないし、WOLFが動くことになるだろうね」
そう。人為的な火柱だとわかっても、GOATと関係が無いと決まったワケではない。
それこそ…政府やWOLF上位層が恐れている、GOATと人間が手を組むという可能性も捨てきれないんだ。
「へー!じゃあ私ら捜査行く感じ!?」
「そうなるだろうけど…美蝶、ちょっと…どころか大分楽しんでない?」
「い、いやぁー?そんなことないけどぉー?」
「明らか動揺してんじゃん」
…美蝶は相変わらずだな。ある意味安心するけど。
「じゃあ、あとは検査結果が出るのを待つだけだね」
「そーゆーことね?なるほど?」
「美蝶それ本当にわかってる…?」
「信用ないなぁ!?」
話題は人類生存の継続にも関わる事のハズなのに、この場所の空気は少し明るくて、気が緩んでいるのでは、とも思う。
そう思うけど、でも、この殺伐とした世界で平常な精神を保っていられるのは、この場所のおかげなのだと。俺の気が狂わないのは、暴走しないのは、明るい空気を生み出す存在が居るからなのだと、改めて実感した。
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