三話 火柱事件

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三話 火柱事件

「それで、火柱事件なのですが…」 サクモンがこっちを向いて内容を読み上げる。 火柱事件とは、最近あちこちで起こっている謎の現象だ。 何もないところから急に火柱が立ち上がる。 今のところ人的被害は無いが、危険な現象だ。早急に解決しろと組織長(ボス)からも言われている。 「で、どんな新情報が入ったの?」 「ええ、それが…」 サクモンが一つ間を置いてから話し出す。 「この現象が、人為的なモノではないかと…」 「「…は?」」 柊樂とハモった。 …じゃない。 火柱の現象が、人為的なモノ? 「人工の火柱ってコトか?」 「そうです。自然現象などではなく」 「どういうことでしょうか…以前の実験では、並の能力者ではあれだけの火柱を作るのは不可能という結果だったのでは?」 「はい…そうなのですが…」 火柱事件の火柱は、パッと想像がつくような普通の火柱ではない。 人的被害が出ていないことが不思議なほど、膨大な力が使われている。 それは堕天使の能力の平均値を余裕で越しているんだ。WOLFの人間でさえも、上級層に値するレベルで。 普通に考えるなら、自然現象、またはGOATの仕業だと考えるのが妥当だろう。 それが、人為的、”人間が”行ったものとなるなら…。 「はぁ…思ってたよりも大事になりそうだな…」 「同感」 「しかし、佐々倉さん」 俺の独り言に柊樂が賛同し、星芹がサクモンに質問を投げかける。 「何故、人為的なモノだと判断したのでしょうか。何か決定的な証拠でもあったのですか?」 そう、気になるのはそこ。 「はい、私も調査班から報告を受けて驚いているのですが…」 この判断の決め手は、火柱の勢いが衰えたときに採取できた燃え滓だったらしい。 その燃え滓は小さな布切れで、赤黒い染みが僅かに残っていたという。 一見、黒と見間違うほどの、乾いた血。 「血術ってコトか?」 「そのようですね。血液を根源にした力でしょう」 「へぇ〜…」 能力者の中には血液を用いる人もいるとは聞いたことがあるけれど。実際には見たこと無いな…。 そもそも、能力者ですら一般人にとっては稀だからな。 「んじゃァ、その血液を検査にかければ良いってワケか…」 「鑑定できるの?」 「DNAは乾燥に強いらしいですし、血液だと判断できたのなら可能なのでは?」 「そっか」 一通り報告し終えたサクモンは、報告書と一枚の紙を差し出した。 「こちらが検査の許可証になります。ここにサインを…」 「はいはーい」 サイン欄に白須賀慧と書いて柊樂に渡す。 ダルそうに受け取った柊樂がフルネーム、桐生柊樂と書いて、サクモンに返した。こういう捜査は、いちいち幹部の許可とサインが必要になる。面倒な事だけれど、混乱や揉め事を起こさない為に必要な事だ。 それに、幹部ならではの仕事なんてこれくらいだからな。偵察や捜査、出張などは普通の団員と変わらない。 むしろ幹部の方が仕事の種類も量も多くて、こき使われてる気がする…。 「では、検査を開始させるよう連絡を入れます」 「よろしく〜」 まあそれをサポートしてくれてるのが組織秘書(サクモン)なんだけど。
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