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若い推し友達
ますます熱くなる、日奈汰への想い。
年の差35は関係ない。
私の寝室はすっかり日奈汰ルームになり、最近は
キッチンまで、推しカラーのグリーンの小物が浸食してきた。
舞台やイベントに行くと、最初にペンラの使い方を教えてくれた彼女と、偶然、3回も隣同士になった。
おかげで仲良くなり、連絡を取り合うようになる。
彼女は”綾夏”さんと言って
とても可愛らしいお嬢さん。
待ち合わせてお茶をして
日奈汰の話で、大いに盛り上がる。
若いお友達が出来て、すごくうれしかった。
日奈汰の舞台の席運を良くするため
綾夏ちゃんは、人に優しく、お仕事も頑張って
寄付をしたりしているという。
いつでも会える様に、美容にも気を使う。
日奈汰のファンとして恥ずかしくない女性に
なる努力をする彼女を、見習い
私も生活を正し、美容にも気を遣う。
息子達も、それについては
「かあさんが若返って、元気で機嫌がいいのは
俺たちにもメリットしかないよね」と言って
大いに推し活を、応援してくれた。
ある日、仕事先で足を怪我したが
どうしても日奈汰の舞台に行きたくて
長男の達哉が、車を出してくれた。
劇場に着いたら、入口で綾夏ちゃんが
待っていてくれて、付き添ってくれた。
無事に席につき、先にパンフも買って
くれて、受け取り眺めていると開演になった。
幕間に綾夏ちゃんは、私の席に来てくれて
「美月さん、トイレ行きますか?大丈夫ですか?」と声をかけてくれる。
「うん、大丈夫よ。ありがとう」
「あの、帰りも息子さんがお迎えに来てくれるんですか?」
「うんうん。この近くのカフェで待っててくれてるんだ」
「そうなんですね」
「帰り、一緒にカフェでお茶する?時間ある?」
私がそう聞くと、綾夏ちゃんは満面の笑みで
「はい!行きます!行かれます!行きたいです!」と答えてくれた。勢いがすごいので少しびっくりしたけど。
「色々お世話になったし、お茶くらい
おごらせてね。あ、達哉も一緒でもいい?」
「息子さん、たつやさんって言うんですか?」
「あ、そうそう、初めてだったね。うちの長男」
そうこうしているうち、幕間の時間も終わり
綾夏ちゃんは自席に戻っていった。
終演後、また綾夏ちゃんは席まで迎えに来てくれて二人でエントランスに行って、息子と落ち合おうとしているとすでに達哉は、出口に立って待っていてくれた。
ところが、その周りを遠巻きに、観客達が達哉をジロジロ見ている。
息子も戸惑いながらも、私をさがしている。
私たちの姿を見つけて、手を上げる達哉。
「やっぱり似ている」
つぶやく綾香ちゃんの言葉にはっとした。
そう、私が日奈汰を好きなったきっかけは
亡き夫、和哉とそっくりだったからだった。
最近、夫に似てきた達哉は
日奈汰そっくりになってきたのだ。
そのまま、3人でカフェに着くと
達哉は席をさがしてくれて、呼んでくれた。
綾夏ちゃんが
「息子さん、優しいですね」
と言うその顔は、いつもより可愛らしく見えた。
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