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あと一回だけ、人生のリスタートを切れるというのなら。それならば、僕は今一度この手に絵筆を握っているだろう。
チューブから色とりどりの絵の具を絞り出してパレットを色彩豊かにして、目の前のキャンパスに思いっ切り想像力を詰め込んでいただろう。結果であるとか、評価であるとか、そういうことは抜きにして。ただ、絵筆に色をのせて思うままに、誰の指摘も受けず、どんな批判もどこ吹く風とばかりに自由に描いてみたかったのだ。
一度払い落とした筆にはもう触れることすらできないままに、幾つもの時を過ごしてしまったから。
きっともう、今更絵を描いたところで、見るに堪えない愚作にしか仕上がらないだろうけれど。
それでもと願ってこの筆を握ろうとする手を、どうか止めないで欲しい。
指先に触れたその軽さは、驚くほどに僕へ明るい未来を指し示す。
そうであって欲しいと願う。
だから、あと一回だけ──。
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