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「その顔は怒ってるね」
ラウンジを出て展望台に来ると先生が言った。
「当たり前です! 私は先生と結婚するとは言ってませんよ」
「君を守りたかったんです」
「だからって酷い! 先生も父と同じだわ! 私の気持ちを無視して」
「あの中年男と結婚するよりは僕と結婚した方がましでしょう? あの男が九条さんの家に押しかけて来て良かったんですか?」
「それは……」
「僕と結婚した方がお得ですよ。お父様と藤堂はラウンジに出入り禁止にしますから、九条さんは毎日、ラウンジの美味しいケーキを食べる事ができますよ」
先生と結婚すればラウンジのケーキが毎日食べられる……。なんと嬉しい申し出!――いや、ケーキにつられるな!
「それに、僕の力でお父様から守る事もできます」
「先生に守ってもらわなくても自分の身ぐらい自分で守ります!」
「そんなに僕と結婚するのが嫌ですか」
「私は誰の顔色もうかがわないで一人で生きていくって決めたんです。先生の顔色を見て暮らしたくないんです」
「僕の顔色を伺う必要はありませんよ。恋愛感情のない結婚なんですから。正直に言うと、僕にも見合い話が沢山来ていてうんざりしているんです。父は僕とどこかのお嬢様をくっつけて政略結婚を狙っているようですが、僕は自由に暮らしたいんです。ですから、九条さんが必要です」
先生も私と似たような状況にいるんだ。
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