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「いやあ。綺麗なお嬢さんですね」
向かい側に座る脂ぎった中年男が無遠慮な視線を私に向けてくる。ホテルのレストランに行くと、個室に案内され、そこには父と瑠璃さんと知らない男がいた。瑠璃さんは来るかもしれないと予想していたが、全く知らない他人が同席しているとは思わなかった。
男は父の会社と取引がある藤堂建設の専務、藤堂剛さんだと説明されて、父の立場がわかった。
藤堂建設は大手の建設会社で、父が経営する九条建設はその下請け会社になる。つまり藤堂さんは一生お付き合いをしたい大事な人なんだろう。その事を理解した瞬間、嫌な予感がした。
「桜子も、もう26歳だろう。お父さん、桜子に藤堂さんを紹介したかったんだ」
笑顔で父が話しかけてくる。
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