屋敷を出る

1/4
前へ
/4ページ
次へ

屋敷を出る

 もう見たくないと城を出た。  けれど、行くてを阻む兵士が沢山居て、八ヶ月練った計画も無駄に終わるかもしれない。  そんな時、ある人に出会った。  その人は、身長が高く、鼻も高く、水平線のように澄んだ瞳で名は、プランス・フリンスと名乗った。  この時、プランスを運命の人だと理解した。そして、プランスの澄んだ瞳も運命を感じたと、願った。  ♢♢♢  私の名は、プリンセス・ゼレーナ。  私の家系は王族で、自由が許されない生活だったけど、ちょうど一ヶ月前にプランス・フリンスという、不思議な王子に助けられて  無事、屋敷から脱獄できた  今は王国から何百マイルも離れた、小さな村に住んでいる。    少し前にはお祭り騒ぎになって私は心底喜んだ。  プランスが言うには、お祭り騒ぎが企てられることはあまりないようだ。  それでも、三日前にお祭りに参加出来たのは、本当に喜ばしかった。 「ゼレーナ様。何かお食べになりますでしょうか?」  跪いたプランスを見ると、屋敷のことを思い出して、嫌な気分になった。    屋敷ではいつも執事が黙々と仕事をしていて退屈していた。  あの時は私が、王女に仕立てあげられていて、そこまで気分は悪くなかったけど、国民の姿を見ると公平じゃない気がして、辛くなった。    プランスが怪訝に見つめてくる。その姿を見てハッとして言葉を 「うん食べる。でも問題があって・・・・・」  発する。    すると、跪き上目遣いをする、プランスは本当に美しく見惚れてしまう。  澄んだ瞳はどこか遠い未来を見ているような気がして、安堵して眠ってしまうそうだ。 「なんともうしましょう?」  キリッと目つきを変えて、上目遣いをやめたプランスは、まさに執事の憧れだった。でも、その姿は私にとって、反吐が出るほど嫌だった。  理由はない。だから辛ったかった。  でも今は幸せ。    安堵の境地に居るので、もう旦那様、私を追うようなことはよしてください。  私はすぐ後ろにある、狭い窓に向けて、国の方向に呟くように思った。 「もう。敬語はやめて普通に接してください」  強く一言だけで込めて、言葉を放った。伝わるだろうか? と不安になったけど、たぶん伝わる。 「ふうん。かしこまりました。本当にいいのですね」  プランスが立ち上がり、微笑んでるけど、強面な顔をして見つめてくる。そして、私も立ち上がり、普通の女の子のようなワンピースを握る。 「はい、私の望みです」  こんな一言で、プランスはガラリと変わり、また別の人物に変わった。    立ち方も全く違って、又を開いている。  それに、瞳も水平線のように澄んでなくて、三日月のように光っていた。  プランスの後ろに光が天井の窓から差し込んでいた。  これのおかげで今が夕方だということがわかった。 「よし、じゃあ夕飯にしよう」  プランスはエプロンを、異世界袋から出して羽織る。  そのまままっすぐ行き、木で造られたキッチンで料理を始めた。  屋敷に居た時は勝手に料理が来るだけだから、料理を作っているとことなんて見たことがなかったから、心が高鳴る。 「今日は何を作るの?」  私が走って、プランスの元へ行って着く。  そして、横から今プランスが料理してくれる、何も乗ってないフライパンを見た。  プランスは頬を赤くしないで私の頭に肘を乗せて、肘掛けのように、私の頭を扱った。 「カレー。プリンセス好きだろ?」  また、プランスは異世界袋から、カレーの材料をを取り出してそのまま鍋の中の放り込んだ。 「うん。やっぱりプリンセスって名前嫌い」  思わず声が出て、自分でも驚く。けれど、今までずっと思ってきたことだから、このまま言い続けたほうがいい。 「なんで?」  プランスが振り返って見つめてくる。  この三日月の瞳が頬に触れてきて、涙が流れてきそうだった。 「屋敷の頃の名前だから、王女みたいに付けられたから」  こんな言葉じゃあ表せないほどこの名前が嫌なのに、簡単に説明してしまう。これが私のくせになってきて、辛い。  深い思いを軽く丸めるなんて信じられない。  重く語りたい、もっともっと私がどれだけ辛かったか語りたい・・・・・・。  そう思っていると、 「じゃあ次の名前は、ミア・アネリアなんてどう?」  プランスが思いがけない言葉を発した。けれど、それが本当に可能なのだろうか? 本当にできるのだろうか?  と不安に感じた。 「えっすごくいい名前。でも・・・・・・名前を変えることなんて、できるの?」  恐れた声に、自分でも嫌気が差して呆れたように瞼を閉じた。  この時見えたのは、暗闇に大きな文字が浮かんできた。  書いてある文字は 【ミア・アネリア】  だった。 「うん、僕の魔力だったらね」  そんな無駄な魔力を、プランスが持っているなんて信じられなかった。でも、今ようやく使われて高揚が高まった。 「どうやってやるの?」  唐突的に質問したけど、プランスは顔色一つ変えないで答えてくれた。 「魔力を目と指に集中させて、君の頭の上にある文字を書き換えればいいだけさ。これだけでみんなの記憶から君はミア・アネリアとして見られる」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加