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「でも黎子さん、よく気が付きましたよね。足の指のとこ、血痕がついてるなんて」 《あー、あれはおそらく血痕じゃないわ》 「ええ?」  《赤ワインよ、阿久津がこぼしたでしょう》  そういえば、店に入ってから三上冴子とぶつかって赤ワインをこぼしたことを思い出した。 「え、じゃあなんで」 《あの場で決定的な証拠を出すことは難しい。でも、不法投棄のトラックを追跡するには時差があるし、可能性として、彼女が犯人である以外は考えられなかった。だから自白してくれるか賭けたってわけ》 「ず、ずるいじゃないですか」  《まあ、刑事だったら誘導尋問とか、偽の情報で容疑者に吐かせるなんてご法度だけど、もう刑事じゃないし、てか私、幽霊だし、推理を披露したのは阿久津だし》  黎子さんは美味しそうにもう何杯目だかわからない赤ワインを飲んでいる。 「なんか利用された気が」 《まあ、おかげで事件は解けたんだし。よかったじゃない》  「ま、まあそうですけど……それはそうと黎子さん。じいちゃんのファイルに生馬光の事務所の取締役って人の不倫調査が入ってました。猪倉雄二? 生馬光のアリバイ崩し。じいちゃんとはそれで出会ったんですね」  生馬光、という言葉を聞いて黎子さんの表情は硬く変わった。 《……そう。なんとかアリバイを崩せないか探してる最中に探偵の十郎さんと会ったの。でも、せっかく十郎さんが情報提供してくれたのに、それを生かしきれず、私は生馬光を死なせてしまった。結局、あの場で生馬光の自白を聞いたのは私だけ。責任をとって刑事を辞めることになった》  寂し気な表情の黎子さんに阿久津は正面から向かい合う。 「大丈夫です、黎子さん。僕が絶対、黎子さんを殺した犯人、見つけてみせますから」  そう言うと、黎子さんは優しくふっと笑みを浮かべた
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