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彼女は画面を眺めながら続ける。
「大学時代、一緒にボランティアをしてて、海岸の清掃だったんです。そこで意気投合して。私は今もボランティアを続けてます。この近所でもそういう活動があるんですよ。少年みたいな人で、私のことをよくからかって、家の中でも隠れて驚かしたり、そういう面白い人だったんですけど、いつの間にか、会社の後輩のあの若い女に心を持っていかれて……」
「うわあああ」
と、突然悲鳴がする。
「どうしたんですか?」
立ち上がり、二階を見上げると、彼女と入れ違いざま、トイレに立った男性が腰を抜かしてドアの前にへたり込んでいる。
「血、血だらけで……」
「え?」
思わず声をあげ、駆けあがる。
「この人……」
浮気をしているというご主人ではないか。
「あなたっ!!」
彼女が大きな声で叫び遺体に駆け寄ろうとするので必死に止める。すぐ後ろの階段を少し下ったところには、浮気相手だというあの若い女性も立っていて、口に手を当て今にも叫びそうなのを息を吞むようにこらえている。
すぐに階段を駆け下り、大将に救急車と警察への通報をお願いする。
黎子さんは赤ワインのグラスから口を離し、こちらを見つめた。
カウンターに両腕をつき、頭を振る。おかしい。
さっき確認した時には彼の姿はどこにもなかった。
一体、どこから現れたというのだろうか――。
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