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救急車の到着も空しく、死亡が確認された。
「殺されたのは三上勉さん、四十一歳。今日、このお店には……」
四門刑事がじろりと若い女性の方を見るので女性は恐る恐る名乗る。
「き、北野舞、二十六歳です。三上さんとは同じ会社です」
「そちらの女性は?」
四門刑事のぶっきらぼうな問いかけに「三上冴子。四十四歳。三上の妻です」と彼女は答える。
「ひえっ、あ、お、奥…様…?」
北野舞は驚きすぎて声が出ていない。青ざめた顔でただ体が硬直している。
「ええ、ずっと見てたわよ。あなたたちがここで食事しているのを」
ぎろりと睨みをきかせた三上冴子の視線に北野舞は萎縮する。第一発見者の男性は小塚という名前でここの常連だそうだ。
一階で事情を聞いていると、黎子さんが手招きし、こっそりと話しかけられる。
《で、気が付いたことは?》
「気が付いたって、何もありませんよ。とにかく血だらけで、すごい現場だったんですから……」
黎子さんは一瞬不機嫌な顔つきになる。
《観察眼が足りてないわね。なんでもいいから現場の状況を教えて》
「なんでもって……三上勉さんは胸を刺されて便器にもたれかかるようにして倒れていて……と、とにかく血が」
《それはわかったから。他には?》
黎子さんは冷静だ。当たり前だ、元刑事なんだから。
「他には特に大したことは……ああ、トイレの内扉にかかってたカレンダーがなぜか来月の八月になってました」
《は?》
「だ、だから大したことじゃないって言ったじゃないですか。あ、あとトイレの小窓から下を覗いたらトラックが一台停まってたんですけど、ちょうど走り去っていくところでした」
黎子さんは何やら考え込んでいる。
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