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「わからねえなあ。遺体がそんな簡単に出現するわけねえし、遺体を発見した小塚さんは三上勉と面識はなし。その前にトイレに立った奥さんの三上冴子さんが怪しいが、その直前にそこの阿久津理櫂が二階には誰もいなかった、ましてや遺体なんてなかったことを証明している。じゃあ、一体遺体はどこからどう出現して……」  四門刑事が頭を抱える横で、じろりと阿久津に目線を移す。またお前か、という声が言わずとも体全体から漏れている。黎子さんの推理を受けて、阿久津は静かに話し出した。 「簡単なかくれんぼですよ、四門刑事」 「は?」 「三上勉さんを殺した犯人は、三上冴子さん、あなたです」  三上冴子は前に躍り出る。 「あなた、何言ってるの? 私と一緒に主人を二階のトイレへ探しに行っていなかったのをその目で確かめたじゃない。私がトイレに立ったのはそのすぐあとよ。一体どうやって……」 「だから、かくれんぼです。三上勉さんはトイレの扉の裏に自ら隠れていたんです」  四門刑事が苛立ちながら頭をかく。 「おい、なんでそんなことする必要あるんだよ?」 「なぜなら、三上勉さんは奥様である冴子さんからのメッセージに気が付いたからですよ。ご主人にしかわからないメッセージを。あのトイレの中で見つけて」  二階を指さす。 「トイレの中?」
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