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「ちょうど強盗事件のあった時間帯の前後、その付近でボヤ騒ぎがあったでしょう。野次馬がたくさんいたから、バイクのヘルメットを脱いだ後、その中に紛れ込めばわからない。住宅街でナンバーを控えられやすい車両で逃げるよりも、群衆に紛れ込む方がよっぽど見つかりにくいだろうし。
そのボヤ騒ぎも共犯が起こしたものでしょうね。そして頃合いを見計らい、共犯から着替えを受け取って変装し、何食わぬ顔で街に紛れ込む。万が一、警察が付近を捜索したとしても、まさか強盗犯がカップルで飲み屋で飲んでいるとは思わないだろうから。しかも犯人は男一人と思われている。カップルでいれば目をつけられる可能性も低い」
そこまで聞いて口が開きっぱなしになっていることに気づく。
「だ、大胆ですね……でもそんな大金、あの人たち、持っているのでしょうか。随分軽装備ですけど」
「一万円一枚はわずか〇・一ミリ。重さは一グラム。百万円なんてたった一センチ、百グラム程度でしょう。男のスーツの胸ポケットの中、もしくはあの女の黒いハンドバッグの中にも入るでしょうね」
ただの美人ではないようだ。
「あ、あなたは一体……」
「私は鞍馬黎子。探偵、とでもいうのかしら」
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