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「た、探偵?」 「あなたは?」  間髪入れず聞かれるので背中をシャンと正してから答える。 「阿久津理櫂です」 「阿久津……」  彼女は少し考えた込んだ様子で首をひねる。 「それはそうと、犯人は左利きだと書いてあります。刃物を左手で突きつけたそうですよ。でもよく見てください、あの人は右利きです。ほら、時計。腕時計を左手首につけてるじゃないですか」  我ながら鋭い指摘だ。 「あら、阿久津。いい観察眼ね。でもあの男、本当は左利きよ」  い、いきなり呼び捨て? と思いながらも続きを聞くことにする。 「腕時計は左手首につけているけど、日に焼けて白くなっているのは右手首。つまり、いつもは右手首につけている証拠。それに、箸を使う食事にはほぼ手をつけず、飲み物ばかりを飲んでいる。左利きだと報道されちゃったから、警戒して念のため右利きの振りをしているだけ。それに、さっきトイレに入るとき、左手でドアノブを回してたし、落ちそうになった箸置きを戻したときも自然に右側に置いていた」   黎子さんの指摘したその半分も阿久津は覚えていなかった。 「よ、よく見てますね。でもどうして彼が強盗犯だと? 右利きの振りをしているくらいじゃ、疑うべきかどうかすら……」  そうだ、左利きだというだけで強盗犯だなんて、いくらなんでも飛躍しすぎている。  ところが阿久津の言葉に、子供をなだめすかすような口調で黎子さんは首を振って言った。
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