26人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
――ああ、私、死ぬんだな。
いつの間にか、土砂降りだったはずの雨が止んでいた。
遠ざかる意識の中で『まだ十六歳なのに』と、我が身に起こった出来事を呪う。
なんで、こうなったんだっけ?
異常に頭が痛い、息をするのが苦しい、もう指一本すら動かせないのがツライ。
自分の意思で動かせるのは、瞼だけだった。
地面に仰向けのまま、ゆっくりと瞬きをし、最期に見えたのは、厚い雲の切れ間から顔を覗かせた銀色の三日月。
まるで『死神が手にしてる鎌』のように見えたんだってこと、春陽に伝えられる未来があったなら、笑ってくれたかな?
きっと泣きながら『笑えないよ』って怒るのかも。
会いたいよ、春陽――。
最期に会いたかった。
浮かんだ涙を瞼で閉じ込めるように目を瞑って、私は永遠に眠りについた。
そのはずだった。
「なんで? ねえ、夏月ってば」
取り戻した意識の中で、春陽は本当に泣きながら怒っていた。
亡骸になった私に向かって――。
最初のコメントを投稿しよう!