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3 魔王城にて
緊張の面持ちで、勇者たちが魔王城の扉を開く。と、何かが胸元にぶつかってきた。
見ると遊び人が胴に抱きついている。彼は勇者にぶら下がりながら、震え声で口を動かす。
「待っていたよー。なぜだか魔王城についちゃって。お世話になった勇者の手伝いができないか侵入したんだけど……。魔王さん、もう亡くなっていたよ」
遊び人は部屋の奥にある、おおきな黒い棺を指さした。戦士が駆け寄って、ひんやりとする棺を開けた。
「おおっ、本当だ! 高齢だとは聞いていたけど、こんなご老体だったのか」
勇者はすばやく、城の大広間や階段を見渡す。他の生物の気配はない。
「四天王と残党はもういないようだな」
「ああ、右通路の奥にある隠し扉かな。そこから出ていったよ。一人オーラが凄いイケメンがいたから、そいつが四天王なのかもしれないね」
勇者に回答する遊び人の頭部を、鳥がかるく突いた。戦士は勇者に訊く。
「どうする、追い込むか?」
遊び人が、じっと勇者の顔を覗きこむ。
勇者は刀の柄を強く握りなおしたが──すぐに手の力を抜いた。
「いや、やめよう。一つの種族を全滅までさせなくともいいよ。ボスはいなくなった事だし……今まで、人間と魔族の間には大きな山が塞いでいた。だけど、話し合ってお互い歩みよれば、いずれ山頂で手を取り合える。そんな気がするんだ」
勇者の脇で、頬を紅潮させた魔法使いが「こういう所が好きだな」とつぶやく。
それを遊び人は聞き逃さなかった。ヒューッと城内にとどろく口笛を吹きならす。彼の肩に乗る鳥も、負けじとクルーッと甲高く鳴いた。
***
その後、勇者は国にもどり、次の王となった。参謀として賢者となった遊び人が脇をかため、末永く国は繫栄した。
のちの物の本によると、この国は生き延びた魔族をうけいれ、人間と共同生活した初めての国だったという。
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