2 山道を歩きながら

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2 山道を歩きながら

 鳥は興奮して羽根をばたつかせながら、四天王にいう。 「初めて人間と話したヨ」 「そういえば私も初めてだな」 「オマエ、ひどい言われようだったな。『賢く、騙し討ちをいとわない卑怯な奴』だっテ」  クエ―ッと笑うように鳥が鳴く。 「酷いよな。賢いのは否定しないが、騙し討ちなんかしたことないぞ」 「でも、今回は勇者一行の寝込みを襲うつもりだったんじゃないのカ?」 「ふん。話をして、どうしようもない連中だったらそうしただろう。だが目的は敵情視察だよ。普段はこんなことしないが、慎重にならざるをえない。魔王様が急に病死してしまったんだから」   想定外の出来事を思いだし、四天王は不満をあらわすように鼻を鳴らす。そして呟いた。 「しかし、噂って怖いな。勇者は三メートルの背丈で、すぐにキレる残虐非道な男か。ただの中肉中背の優男じゃないか。そして……気持ちの良い奴らだった」 「ああ。食事を気前よく分けてくれ、平和になったら仕事まで探してやると。帰りに神の加護魔法を唱えよう、とまで言っていたナ」 「そう、そう。神の加護はびっくりした! そんなものをやられたら気持ちが悪くなってしまう」  四天王は足をとめ、鳥と顔をつき合わせて笑う。 「とりあえず魔王城に戻って、仲間を逃がすか。我々はやってきた勇者に状況をでっちあげよう」 「そうだな。あいつらは町に隠れてもらって、今後は人間に紛れて生きていってもらおう。他の生物に化けるのなんて皆、お手のものだしナ」  山道の闇に、彼らの声と姿がゆっくりと消えていった。
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