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1 山奥で焚火
パチパチ、と薪がはぜて、火の粉が舞う。
鮮やかなオレンジ色が、山の闇のなかで揺れている。
勇者と戦士はその焚火に手をかざし、暖を取っていた。酒をのまない魔法使いと僧侶は、すでに女性用テントのなかだ。もう眠っていることだろう。
「とうとうここまで来たな。後はこの山奥にある城で、魔王と四天王を一人たおせば、冒険もおしまいだ」
戦士がぐびりと杯を傾ける。
「うん。そうだな、ここが僕らの山場だよ。でもな……」
勇者はテントの方に目をやり、魔法使いたちが周囲にいないことを確認した。
「同じ村の出身で、昔からの付き合いの君だからいうが──厳しくないか?」
勇者の力ない言葉を聞き、戦士はゆっくりと頷いた。腕組みをして重々しく言葉をだす。
「確かに。この前、倒した四天王も捨て台詞を吐いてたもんな。『くっくっく、我は四天王最弱! 城に住むヤツは我の千倍は強い!』って」
勇者は片手で目を覆っている。首を左右に振りながら、
「あの四天王って、まあ苦戦しただろ。魔法使いもMPぎりぎりで、僕らも瀕死の状態。クリティカルヒットが出なかったらどうなっていた事か。あれの千倍だよ、無理じゃないか?」
「まあ戦闘の相性があるだろう。最後の四天王が俺らの属性にぴったりで、倒しやすいって可能性もある。ゾンビ系のボスで、うちの僧侶の回復魔法がとんでもなく効くかもしれん。だいたい千倍強いなんてあり得るか? あの四天王が大げさなだけじゃねえか。それに魔王もだいぶ年をとったと聞く。弱体化しているかもしれん」
伏し目となる勇者の肩を、戦士がかるく叩いた。
すると、勇者が頭をあげ、顔を戦士にぐっと近づける。
「魔王を倒したら、魔法使いと結婚するんだ!」
戦士は目をまるくして勇者を見つめた。
「お、お前らいつの間に……羨ま……けしからん! 死亡フラグに聞こえる名セリフで言ってるし。くそ。俺は、僧侶にガサツすぎて嫌われている気がするというのに。でも、しゅ、祝福するよ」
「すまん。明日、魔王城に攻めこむし、これが最後の夜じゃないかと思って。事前に伝えたくてさ」
「いや、良いんだ。俺だって平和が戻ったら武道場を開いて、がっぽがっぽ金を稼がせてもらう。魔王を退治した伝説の戦士として。僧侶だって広大な寺院を開けるだろう。お前ら二人だけが幸せになるんじゃない。皆、この山場を乗り越えたら、幸せになれるんだ」
戦士はようやく浮かんだ勇者の笑顔をみて、豪快に笑った。
だがその時、百戦錬磨の二人にしては迂闊なことに、全く気がつかなかった。自分らの野営場へ部外者がやって来たことに。
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