つづきさん。

3/6
前へ
/6ページ
次へ
 都築さんはけして美人ではなかったけれど、照れている顔はなかなか可愛いものがあった。仲良くできたら嬉しいと、私もそう思ったものである。 「このクラスのみんな、優しくて好き」  休み時間。私は、都築さんに積極的に話しかけにいった。すると彼女はちょっと寂しそうに笑って、こんなことを言ったのだ。 「実はね。あたし、友達つくるの全然上手じゃなくって。すぐきらわれちゃったり、いじめられちゃったりするというか。その、ね。きっとあたしにも悪いとこがあるんだと思うけど、よくわかんなくって」 「え、いじめられたことあるの!?」 「うん。前の学校転校したの、お父さんの仕事の都合とかじゃないの。前の学校でいじめられちゃって、あたしがもう学校行きたくないって言ったら……お父さんが、転校してくれるって、そう言ってくれて」 「そうだったんだ。大変だったね」 「あたし、ブスだからだと思うの。肌もきれいじゃないし、太ってるし、目もちっちゃいし。だから、オバケ女!ってみんなから言われて。それが、すっごく辛くて」 「うっわ、ひっど……」  当時、私は自分で言うのもなんだけれど、結構正義感が強い方で。  彼女の言葉に憤慨して、はっきりとこう言ったのである。 「そんなこと、うちのクラスじゃ絶対ないよ!大地くんも一緒に楽しくやろうって言ってたじゃん。うちのクラスは、みんな友達なの!」  クラス全員、友達になれる。あの時の私は当たり前のようにそう信じていた。 「だから、心配しないで!もし、都築さんに“オバケ女”なんて言ってくる奴がいたら教えて。私がメッタメタのギッタギタにしてあげるから!」 「ジャイアン?」 「そう、ジャイアンになる!ジャイアンはいじめっ子だけど、映画とかだと友達を絶対見捨てないいい奴なんだから!」  冗談交じりに言えば、彼女は声を上げて笑ってくれた。きっと、彼女とも親友になれる。私はそう思っていたのである。  さて、そんな都築さんには、ちょっと可愛いところがあったのを覚えているだろうか。  例えばよく大地くんなんかは、先生相手にこう言って笑いを取っていた。そう。 「はーい、わかりました、おかーさん!」 「ちょっと大事くん、私はお母さんじゃないわよ!」 「あ、あかん、またやってもうた!失敗した!すんまへん、オトン!」 「お父さんでもなーい!」  先生をうっかりお母さん、と呼んでしまうアレである。ついやらかしてしまう子は少なくないだろうが、大地くんは笑いを取るためにわざとやっていたように思う。先生もわかっているので、悪乗りして笑っていた記憶がある。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加