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代返
実は伸ちゃんと翔ちゃんは同じクラスの5年生である。お家はお隣同士だというのに一緒に登校する姿は未だに誰一人と目撃をしたことがない。
5年3組の教室では出欠の点呼が始めっていた。
「神田和美」
「はい!」
「元気があっていいぞ!」
「つぎ、才木伸」
「は~い」
「“はい”は短く」
「はい!」
その後、何人かの点呼が続けられた。
「見取翔」
「もう一度呼ぶぞ、みとり・しょう?」
「居ないのか?」
俯き加減だった先生は机上の出欠名簿から視線を外し翔の姿を模索し始めた。いかに担任といえども生徒一人一人の席位置まで把握できていなかったようだ。
ところで見取翔の姿は?・・ありゃ⁉ 着席ではなく机の横に起立、しかも挙手しているではないか。
「は~い・・先生」
「いちいち起立しなくてもよろしい、それより呼ばれたらすぐに返事をしなさい」
「はい、先生」
一時間目の授業は終わった。
「危なかったな伸」
「そうやねん、今日も翔の奴、僕に『頼む!』言うて図書館へ直行しやがった、代返て何遍もしてるといつかはバレルって言うてんやけどな・・」
休み時間に入った伸は教室の片隅で友達と二人、例のごとく翔の大胆さをぼやいていた。
才木伸と見取翔は住まいが隣同士ということで、仲良くはしているが、話が全く合わない。いやもう一つ伝えておきたい出来事がある。
ある日、伸が翔に頼まれて「今日は図書館行くんで遅くなる」と翔の母親に言付けを頼まれた時のことだ。伸が見取家の門をくぐった時、庭で洗濯物を取り込んでいた翔の母は・・
「なんや翔君かいな、今日は早いな・・あっこれ持って入って」
と言って取り込んだ洗濯物を手渡された。伸は翔からの伝言を伝えようとしたその瞬間だった、
「翔君、あんたその服どないしたん⁉ 学校で何かあったん?」
「おばさん、ぼく・・僕、違うねん」
「何が? 何が違うねん?」
「僕、翔君と違うねん」
それだけ二人は似ているということだね。
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