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文化祭
伸は友達と寄ったらゲームの話ばかり、逆に翔は図書館に入りびたりの勉強好きだ。それもただ好きなだけではない、いま小5の翔だが塾では既に中学3年生のクラスに在籍している。
自宅ではもっぱら宿題のドリルだが、図書館では全く違った勉強をしている。それも館長の控室で何やら密かに学んでいる。
秋の文化祭の日が近づいてきたある日、各クラスでホームルームが開かれている。
「課題は君たちで決めること、条件としては体育館のステージの上で披露できる演目だ。例えばクラスでコーラスを歌ったり、ブレーキングダンスをやったり・・そんなところかな⁉」
「先生、それって今日中に決めるんですか? いきなり言われても直ぐには思いつきません、他のみんなはどう思う?」
「そらそ~や、来週まで、来週みんなで持ち寄ったええやん、なぁ先生」
「そらそ~や、先生もそれに賛成!」
そんな訳でみんなが各自で考えてくることになった。それが原因か翔は珍しく伸に声をかけ二人は一緒に学校を後にした。
「なぁ翔ちゃん、お前やったらええアイデア考えてるやろ?」
「なんで? なんでそう思うのん?」
「先生が話してる時のお前の口、ニンマリへの字になっとったもん」
「そうか・・伸ちゃんは相変わらず勘がええな、負けそうやで」
「もう負けとるって」
「しゃないな伸ちゃんには、そや、これから図書館まで付き合ってくれへん?」
「図書館って翔ちゃんがいつも行ってる図書館か? あそこの図書館て5時で閉まってしまうんと違うん?」
「うん、普通はそやけど・・まっ一緒に来たら分かるわ」
翔に誘われたからではない、伸は以前から図書館に通う翔の正体を覗いてみたかったのである。何度か翔に代返を頼まれるも
「どこ行くねん?」と尋ねると、いつも・・
「図書館や」だけで、そこで何をしているのかを明かしてくれなかったからだ。
伸は想像していた。翔がゲームの誘惑にソッポが向けるだけの理由がきっとそこにあるということを。
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