アプリの裏側で

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アプリの裏側で

「館長さん、今日は友達連れてきたんやけど、かまいません?」 「おや、見取君とソックリやんか・・まるでブラザーズやね、そうですか、それはそれは、二人ともどうぞごゆっくりと」  翔が承諾を伺う言葉に対し、真正面からではなく『どうぞごゆっくりと』という言葉で優しく承諾した館長、伸はそれだけで翔が図書館に通い続ける理由の一つを見つけたような気がした。 「翔、お前、もの凄い大切にされてるねんな、見直したで」 「そんなことあれへんて、館長さんは誰にでも優しいんや、まるでお爺ちゃんみたいやろ」 「誰が爺さんや?・・て」 館長はギャグを飛ばしたつもりだった、でも顔の表情が真面目過ぎて二人には旨く伝わらなかったようである。 「館長さんすみません」 口走ったものの館長は照れを隠す様に二人に背を向けると、右手だけで挨拶を交わし館長室に消えていった。 「翔、儂らも帰らなあかんのやろ?」 「いいや、これからが僕らの時間やがな、そや伸ちゃん、そこのディスプレーの電源入れてくれる?」 「これか⁉ 何やこれ?・・ここに写ってるのんて、建築現場のクレーンとちがうん⁉」 「そんなんほっといて伸ちゃん、こっち来てみ・・これ何やと思う?」 「キーボードみたいやけど・・あっそうか!これがコントローラーになるんやな、なんで普通のコントローラー使えへんの?」 「リアルコントロールやったら面白くも何とも無い思うてな・・あらかじめ複数のプログラムを入力しといて鉄骨を組み立てて遊ぶねん」 「翔ちゃんちょっと待って~や、ゲーマーの僕から言うと、そんなん全然おもろ無いで」  さすがですよね、勉強する間があればひたすらゲームに没頭する伸ちゃん、リアルでコントロール出来ないゲームなんてつまらないと正直に訴えたのである。 「そうかな~? もし伸ちゃんがマンションに住んでてやで、小さな地震やのにマンションが傾いたりしたら嫌やろ?」 「そら嫌やけど、なんでそんなこと僕に訊くのん?」 「だから・・マンションの設計段階でその問題点を見つけ出すねん、それやったら欠陥住宅なんて世の中から消えて無くなるんと思うねん、僕はやで」 「そんなアプリを作りたいのん? 翔ちゃんの夢は分かったけど・・」 「違うねんて、伸ちゃんにそのアプリのプログラムを作るの手伝ってもらをと思うてここに誘ったんやがな 」 「そんなん、無理! 絶対無理!」  伸はコンピュータゲームのオペレートはできてもHTML やDOS/Vのプログラムなんか覗いたこともない。 「伸ちゃん、前に進むことを英語で言うと?」 「・・レッツゴーとちゃうん?」 「それは掛け声やんか、コンピュータプログラムの世界で前進はMoving(ムービング) Forward(フォワード)って入力するねん」 「後ろに動かすのは backか?」 「正しくはfall(フォール) back(バック)と入力してくれる」 「そやけどこのアプリとクラス対抗の文化祭と何が関係あるねんな?」 「そやねん、それも伸ちゃんに考えてもらいたいねん」 「そら無理! 翔ちゃんが考えて無理なん、僕には絶対無理!」  実は翔が伸に提案した耐震補強のアプリは翔と館長の二人で既に完成しているものだった。
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