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「わ、痛そうだね」
同年代くらいだろうか。
全体的に柔らかな雰囲気で、美人というより可愛いと言うほうが似合う愛嬌のある女性だ。
「一人で犬の散歩してたの?」
「うん、ぼくの仕事なの」
「そうなの。すごいね」
女性は近くにあった公園のベンチに男の子を座らせると、鞄に入っていたハンカチを水で濡らした。
「沁みるかもしれないけど、ちょっと我慢してね」
「…っうん」
「痛いね。でも、ちゃんと消毒しないとバイ菌が入っちゃうから」
女性は慣れた手つきで鞄から消毒液やガーゼを取り出して処置をする。
そんなものまで持ち歩いているなんて、しっかりしてる人なんだろうと思った。
今まで出会った人の中でも持っているとすれば絆創膏くらいで、消毒液なんてものを持ち歩いている人は一人もいなかった。
だから、いざという時のためにそういうものを持っていることに驚いた。
「ごめんね、あと少しで終わるからね」
男の子は微かに顔を歪めながらも、大丈夫、とでも言うように頷いた。
その様子を見てニコッと安心させるように笑う彼女に胸がひとつ高鳴った。
人懐こさや親しみやすさを感じる笑顔に惹き付けられ、その彼女からなぜか目を離すことができなかった。
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