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「はい、終わり。頑張ったね!」
そう褒められると男の子は恥ずかしそうに顔を赤くするものの、その言葉がよほど嬉しかったのか、少し頬が緩んでいたように見えた。
「おねえちゃん、お母さんみたい」
「え?」
「ぼくのお母さん、かんごしさんなの。だからね、いつもケガしたら今おねえちゃんがしてくれたみたいに手当てしてくれるんだ!」
「すごいね! かっこいいね! そうやってたくさんの人を助けてるんだね」
「うんっ!」
「じゃあ、頑張ったんだよって教えてあげないとね。きっと褒めてくれるよ」
最初に泣いていたのが嘘みたいに、男の子の顔にもう涙はなかった。
自分のことだけじゃなく母親のことまで褒められたのが照れくさそうで、でも誇らしげだった。
その子の頭を撫でてあげる女性が優しくて、胸が締め付けられる気がした。
痛いような苦しいようなくすぐったいような、言葉にならない感覚。
こんなのは初めての感情で、そのことに戸惑い、もうなにがなんだかわからない。
女に対してこんな気持ちになったことなんて今までなくて、混乱するばかりだった。
あの過去がある前ですら、こんなふうになったことはないような気がする。
なのに、どうして今は……。
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