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あの日からずっと頭の中は彼女のことばかりで、それ以外のことは考えられなかった。
公園で見た優しい笑顔が忘れられなくて、彼女のことを知りたいと、会いたいと何度も思った。
住んでるところはおろか名前すら知らないのに、気持ちは日々消えずに強くなっていく一方だった。
会わなければなにも感じることはないと思っていたのに、あの時に心が動いたのも気のせいだと思えたのに。
どうして会えない時間が増えるほど、会いたい気持ちは大きくなるんだろう。
いつもどおり仕事をしていても落ち着かなくて、全然集中できない。
そのせいで上司からは怒られてばかりで、他の同僚にも心配される始末。
しっかりしないといけないのはわかっているけど、気を抜けばまた考えてしまう。
どうして、こうなってしまったのか。
たった一人の女に気を取られるなんて今まで俺らしくなくて、自分でもどうすればいいのかわからなかった。
***
「最近なんかあった?」
昼休み、同期の笹原 楓と食堂で食べていると彼は言った。
そう言われるほど、前までとはどこか違って見えるということなのだろうか。
仕事に多少の支障は来たしていても、自分では普段どおりにしているつもりなのに。
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