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あの日はなんてことのない日だった。
そう思うのに、あの彼女のことばかり考えてしまう自分はきっとおかしい。
可愛らしいとは思ったけどそれだけで、どこにでもいるような女に過ぎないのに。
なのに、彼女のことを考えると、どうしてこんなにもドキドキが止まらないんだろう。
「夏山と付き合うことになった、とか?」
「はあ?」
「いや、だって仲良いじゃん、お前ら」
詩織と親しいのは事実で、それは否定しない。
同期として、友達として、セフレになる前からそれなりに仲は良いほうだった。
詩織はサバサバとしたタイプで一緒にいて楽で、他の女達とはどこか違っていた。
一線を越えてからは以前とは違った距離にいる気がするけど、それだけ。
だけど、どれだけ関係を持っても、詩織との心の距離は一定で近づくことはない。
「詩織は友達だっての」
セックスはするけどそれだけで、友達であることはこれからもきっと変わらない。
最初は流されて始まった関係だったけど、今は当たり前のように抱き合う。
ただの性的欲求のためだけに、つらい時や苦しい時の逃げ道のために。
そこに特別な感情なんて今もこれからもないし、そんなものは求めてない。
それは詩織にとっても同じだと思う、…いや違う、そう思いたい。
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