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それより三日後の晩。弥二郎はまた宿場へと足を運ぶとそこにはいつも通りにせつがいた。
「私の領地の兵も腹を下しております」
笑顔を見せるせつに弥二郎は不可解だと思っていたことを尋ねる。
「あの団子は全て毒じゃなかったのか?」
「全て毒でした。ですが、毒消しを混ぜた団子と毒消しを混ぜたお茶を無作為に配ってもらいました。弥二郎さんには毒消しの入ったお茶を配ってもらいました」
「せつは怖いな。戦を回避できる知恵がある」
「あら弥二郎さんも毒を食らう勇気があるじゃありませんか」
二人の足元には毒の入った団子が黴びて転がっている。拾う者もありはしない。二人ともあと一回もう一回とこの先も逢瀬をこの宿場で続ける。この足元の団子が二人の一生よりこの地に残るとは思いもせずに。
なんて話はどう?
得意気な男の子。女の子はへぇと息を漏らした。
「素敵ね! 団子石でそんなお話つくるなんて! また団子石の別のお話も聞きたいな!」
「えーー。じゃあ考えてくるよ。またここで話すよ。でも、お話考えるのあと一回だよ?」
「それでもいい! あと一回! あと一回!」
男の子のあと一回では済まないだろうと予測している。それでもいい。目の前の女の子が喜んでくれるならいくらでも考える。二人きりの時間を誰にも渡したくないから。
二人の足元は当たり前に団子石は転がっていた。
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