明日香という女性

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明日香という女性

 内藤明日香は、とかく老人にモテる。  どこか野暮ったいからなのか、今時(いまどき)じゃない感じがするのか、七十超えたぐらいの男のひとに、親切にしてもらえることが多い。  老人たちの満面の笑顔に、笑顔で返して挨拶してしまうから、親しみを抱きやすいのかもしれない。  内藤明日香は、年下にもモテる。  慕ってくる彼らには、明日香が愛想の良さの裏に抱えている、深い孤独や闇までもみえている。  それを大人びていると誤解するのか、明日香が人生の深淵や世界の真理を掴んでいるとでも思うのか、憧れの眼差しで甘えてくるので厄介だ。  知るものか! 人生の深淵とか、世界の真理なんて。明日香はまだ二十六歳で、ひよっこの人生駆け出しなのだ。  同世代から、数歳年上の男性となると(その世代は、明日香が恋愛や結婚をイメージできる世代なのだけど)、明日香が深い孤独と闇のなかで、溺れかかっているのまでみえている。  溺れる者に安易に手を伸べたら、引きずり込まれて自分も溺れる。だから、その世代に圧倒的に明日香はモテない。
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