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早く成長して、早く家を出て行って欲しかったのに。
何故か、本当に寂しくて寂しくて仕方がなかった。
「母さん。着いたから降りて」
私は、次男に促されて地面へと降りた。
あと一回。
あと一回、次男をおんぶしたいと無性にそう思った。
けれど。
そんな時間はなくて、私と次男は飴が入った粉の中に顔を突っ込み、顔を白くしてゴールした。
競技が終わった後、次男はさっさと私には何も言わず、水道へ顔を洗いに行ったみたいだった。
「真っ白だな」
夫の所に戻った私を、彼は濡らしたタオルを差し出しながら言った。
「そうね」
「あの子のおんぶはどうだった」
「落ちないか、ハラハラしたわ」
私はそう言って、濡れたタオルで顔を拭った。
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