当日

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 溢れてきそうな涙も、それで拭うことにした。 「でも、お前をおんぶできるようになったんだな」  私が泣きそうになっているのを気付かない夫は、呑気にそんなことを言ってくる。 「きっと、もっと大きくなるんだろうなあ」  その声に。  寂しさが混じっていることも、私は気付いていた。 「まだ、早いわよ」  タオル越しに、そんなことを私が言ったら。 「あっと言う間だぞ、本当に」  夫は、そんな言葉を返して来た。 「……そうね」  次男が早く独り立ちして欲しいという気持ちは、嘘じゃあない。  私は、早く義務を果たして、楽になりたかった。  けれど、その一方で。  あと一回、次男をおんぶしたり抱っこしたりできたら、と思った。  もちろん、今さらそんなことはできないけれど。  私は、そんな気持ちを抱きながら、タオルを持つ手に、力を込めた。
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