五.

1/1
前へ
/10ページ
次へ

五.

どれほどの年月が流れたのか、隔絶され閉じた空間ゆえ、全くわからない。 が、いちいちつっかかってくるものの意外にも新しい要素(エレメント)創りについて名案を示すヤエキと、それをどこにどれだけ置けばいい山になりそうかを(ひらめ)くメノ。 二人の助言のおかげで、まだまだ一部分だけではあったが、山は山として機能する「系」を築き始めていた。 「なるほど……こういうことね……」 「ほんとにわかってんのかよ」 「まぁ、あたしたち山育ちでずっと山を見て暮らしてきましたから」 山頂から、完成しつつある(ふもと)の辺りを並んで眺める三人。 「なんとかなるような気がしてきたよ。 ありがとう。 この調子でどんどん行こうか」 ジンの言葉に、ヤエキとメノが笑顔で(うなず)き合った。 「では、私はあっちに集めた彷魂(ほうこん)をどんどん転生して、ヤエキが発案した要素(エレメント)を創りまくってくる」 (はる)か山腹にぼんやりと光る白いかたまりがあり、ジンはそちらへ向かって駆け去った。 「俺はここでまた新しいの考えるわ」 分厚いスケッチブックを開き、楽しげに筆を走らせ始めるヤエキに、 「じゃあ、あたしはあれとかこれとかをどこに置けばいいか、山を歩きながら決めてくるよ」 すでに創られ空中に仮置きされている、不思議な生物や、不思議な音や匂いを指さしながら、メノが軽快なステップで手を振った。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加