10人が本棚に入れています
本棚に追加
(紗矢)
「は?」
何て言ったんだ、こいつ。
あたしと光はアパートの屋上にいた。花火が、夜空に明るさを放ち、遅れて音を上げてはしだれ落ちていく。あたしの住むボロアパートの屋上は、この地域の年に一回のこの日だけ、プレミアのつく場所になる。
「やるよ、俺の分」
光が微笑んだ。そして、屋上の塀をひょいっと乗り越えて――
ふざけんな!
昔からあたしの方が力持ちだ。細っこい非力な光を足の着く場所へ引き戻すくらい、簡単なんだから――多少腰を痛める年齢ではあっても。
「俺にはあと一回チャレンジ権が残っている。でももう必要ないから。お前が娘と暮らせないことへのリプレイ検証に使え」だなんて。
そんな。そんなの――
最初のコメントを投稿しよう!