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(光)
「はあ? あたしが行って、あんたの権利使いますって言って聞いてもらえるとでも? 飛び降りる前に、一緒に行ってほしいわね」
紗矢はこの期に及んで相っ変わらず図々しい。使わせてやるって言ってるのに、その上付き添えってか。
へえへえ、毒を食らわば皿まで。隣の家に生まれてしまった幼なじみのよしみ。
そういえば、それをリプレイ検証しようとしたこともあったな。けど、無視すればすむと気づいてやめたんだった。
そして大銀杏さまのもとへ、紗矢と二人やってきた。
「俺の最後のチャレンジ――紗矢が娘と暮らせないことを――」
が、言いかけた俺のセリフに、紗矢がキンキン声をかぶせた。
「この人の寿命、本当にあと数か月なんですか? お医者の見立て違いでしょ!」
――え?
紗矢は俺の背中をぶっ叩いた。
「あんたのチャレンジ権でしょ。あんたが使いなさいよ」
「相変わらず考えなしだな! あと一回しかないんだぞ、わかってるのか!」
「ここぞってときに使うために大事大事に取っておいたんでしょ! 今以外のいつだって言うのよ!」
「だっ、……だから」
俺が言葉に詰まる間に、大銀杏さまの枝葉が小さく揺れて、キラリと光った。
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