(光)

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(光)

 ああ、受かったのか、紗矢のやつ。一度は不合格だったらしいけど、採点ミスだと発覚したって。  チャレンジ制度使ったっておばさんが言ってたな。成功したから減らなかったものの、今後の人生まだまだ長い。どんな不運やら不幸があるかわからないだろ。何でそういうときのために備えておこうって思わないかな。不用心なやつ。  まあ言っても無駄だから放っておく。  僕は高校へ入ったら野球部へ入ろうと決めていた。汗と涙と思い出を。今しかできない青春を精一杯。  毎朝7時に登校、筋トレとトスバッティングとノックの朝練――レギュラーを目指す控えの連中と一緒に頑張り続けた。体力も技術もどんどん伸びるのがわかり、これはいけると思った。  そして予選の先発メンバーの発表。  僕の名前は、呼ばれなかった。ベンチ入りもできなかった。  そんな。そんな。  僕は、退部届を書いた。 「あんたバカね! 何で使わないのよ、チャレンジ制度。こういう時に使うのよっ!」  地獄耳の紗矢が絡んできた。そして無理無理大銀杏さまの前に連れていかれた。 「さあ願いなさいよ。試合のメンバーに入れなかったことをリプレイ検証!」  悔しさで何も考えられなくなっていた僕は、つい紗矢の勢いに圧されてしまった。 「検証をお願いします……」  大銀杏さまの枝葉が小さく揺れ、キラリと光った。  
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