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役人は続けて丹生は石の回収と諸々の後始末のため、止利は取り押さえられた縄手についていてこの場にいないことを告げ、今日はどういういきさつでナギがそこにいたのか聞いてきた。
ここまでで虹売りの話は全く出なかった。
水色の石が引き起こしたであろう事件が起こった時に、それが持ち込まれきっかけになった人物が居合わせたなど、詮索されるに決まっている。それが浪切で所払いになった者だと知れれば、北都でも同じ扱いになってしまうかもしれない。
虹売りがうまく翰林院を抜け出していることを信じて、ナギはひとまず虹売りのことは伏せ、丹生の房を出たところから話を始めた。
役人はナギの説明に疑問を感じなかったようで、一通りのことを聞くと上屋敷に戻るのであれば乗り物を手配しようと腰を浮かしかけた。
労われれるのがつらく、恥ずかしくてたまらなくなったナギは、役人の申し出を丁重に断り、提灯だけ借りてカイ父親と歩いて帰ることにした。
翰林院の外に出ると小雨はまだ降り続いていたが、ちゃんとカイの父親は傘を持ってきていた。
聞けば日暮れ前に、若様に使いを頼まれたと浪切の紋が入った風呂敷包みを持ってきた男が上屋敷にやってきて、若様は翰林院にいる、雨が降りそうだから傘を持っていった方がいいと言ったそうだ。
それからカイの父親はしきりに「俺の体がしゃんとしてたら、もっと早く行ってぶっとばしてやったのに」とひきずる左足をわざと乱暴に振り回してみせた。あまりに悔しがる姿にナギはひやりとした。
これで金屋の者を敵対視して、意趣返しだの敵討ちだの盛り上がられては困る。縄手のやったことは不可解だが、金屋は親戚だ。これからもつきあいがある。それに両家の間がぎすぎすすれば、ミシルが婚家で居づらくなるだろう。
カイの父親には、頼もしく思うがあまり騒ぎ立てないようにと釘を刺したものの、いまひとつ腑に落ちている顔ではなかった。
上屋敷に戻ってからがまたひと騒動だった。
出入りの者に何があったか説明し、深代が帰ってくるまで言いふらさないように言ったが、それでも話を聞きつけた者がぼつぼつと尋ねてくる。そのたびに無事と謝意を伝え、深代が明日には帰ってくるからまた日を改めてお知らせすると繰り返さねばならなかった。
家に帰っていた通いの番頭が屋敷に戻ってきて、ようやく自室に引っ込むことができたのだが、頭を打った時は痛みが無くても後が心配だからとカイが不寝番を申し出たのだった。
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