file 1 絡む視線

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現代文の講義、終了5分前。 集中してないわけじゃないけど、どうしてもそわそわしてしょうがない。 ──学校帰りの予備校。その帰り、香織とラーメン屋に寄った後の地下鉄のホーム。長身のその人に声を掛けられたときは胸が跳ねた。 同じ時間に行けば、いるかもしれない。ちょっとのタイミングのズレで、いないかもしれない。 講義の後に毎回ラーメン屋に行くわけにはいかない。女子高生、そうしょっちゅうラーメン屋には行かないのです。ハンバーガーを齧るときもあれば、牛丼屋に行くときもある。 私は彼の連絡先を知らない。でも、学校の同じクラス。1日に何度も視線が絡む。彼は少なくとも私に、何かしらの興味はあると思う。 どの講義を受けてるんだろう。彼がここの塾生だということしかわからない。 学校で毎日会っているというのに、遊んでそうな風貌な彼は、視線を絡ませるだけで私に声は滅多に掛けない。 でもこないだは声を掛けてくれた。周りに誰もいないと声を掛けてくれるみたいだ。 じゃあ私から声を掛ければいいって? 出来ませんよ。即答ですよ。 地味な風貌のこの私が、カースト上位の彼に声を掛けるだなんて。周りの目が痛過ぎるじゃない。弓道部の男子相手なら平気なんだけどな。
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