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でも 今の私に そんなことを 気にしている余裕がなく 必死になって壁伝いに部署まで歩く。 「あの、どうかしました?」 「いえ、大丈夫です。メガネをかけていないので、前がよく見えなくて……」 「よ、良かったら、俺が」 「いえ、結構ですよ。この人は俺が、案内するんで大丈夫です」 どこからか 聞こえてきた真島くんの声。 スッと 手を伸ばせば 私の手に優しく そっと自分の手を重ねてくれた。 「行きましょう」 「う、うん」 大きくて あたたかくて優しい手。 こうして 真島くんと 手を繋いでいるだけで 彼のぬくもりが 伝わってきて胸の奥がほっこりとあたたかくなる。 .
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