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4 ヨソモノ登場
ある日、由香里が知らない人を家に連れてきた。あたしは縄張りを守るために、初めて威嚇した。全身の毛がブワッと逆立つ。これも本能ってやつ?
「ただいまー。」
「こんにちは。お邪魔します。」
「フーッ!(余所者は出ていけー!)」
「ルナ、落ち着いて。この人は浅見秀人っていうの。私の大事なお客さんなの。」
「へぇ。君がルナちゃんか。元気があって良いね。ルナちゃん、よろしくね。」
「シャーッ!(気安くあたしの名前を呼ぶなー!)」
あたしの威嚇も虚しく、玄関まで出迎えに来たお母さんにあたしはひょいとつまみ上げられて、そのままお母さんに抱きかかえられてリビングに運ばれた。お父さんやお母さんに対して威嚇してくる動物(患者)とずっと向き合っているだけあって、浅見秀人を威嚇するあたしの扱いもお手のもの。
お母さんは浅見秀人をリビングのソファーへと着席を勧めて、あたしを浅見秀人の隣に座った由香里の膝に乗せた。
「秀人くんお久しぶりねぇ。お仕事忙しかったんだって?」
「先生、ご無沙汰してます。」
「やだわぁ。先生だなんて。」
キッチンで飲み物を用意しながら、お母さんは照れ笑いをしていた。お母さん、あたしにもミルクを用意してくださいな。
「お母さん、何照れてるの?今も現役の獣医なんだから、『先生』で間違いないじゃない。」
さっき威嚇してまだ興奮状態のあたしを落ち着かせようとしているのか、由香里がずっとあたしを撫でてくれている。
「でも秀人くんがうちの動物病院に猫のタロウくんを連れてきてたのは随分前だからねー。ところで今日はどうしたの?」
「それは…その…、秀人にルナを見せたかったのよ。」
「それだけなら、私とお父さんが在宅してなくても良いんじゃない?」
「…まぁ…、確かに先生の仰るとおりで…。」
「もう!お母さん!何すっとぼけてるのよ!薄々分かるでしょ?!お父さんが来る前に本題に突き進まないでよ!」
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