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5 君に娘はやらん!
お母さんがソファーの前にあるローテーブルに4人分のコーヒーを並べて、ローテーブルの下にあたしのミルクを置いてくれた。あたしの気持ちがお母さんに伝わった!
ちょうどそのときお父さんもやってきて、由香里の対面のソファーに座った。浅見秀人がソファーから立ち上がってお父さんに対してお辞儀をした。
「今日はお時間いただきありがとうございます。こちらつまらないものですが、召し上がってください。」
そう言って浅見秀人が持っていた紙袋からきれいな包みの箱をお父さんに両手で渡した。
「秀人くん、手土産ありがとう。そんな畏まらなくて良いんだよ。」
お母さんがお父さんからきれいな包みを受け取って再びキッチンに向かった。
「タロウの件では先生に大変お世話になりました。」
「いやいや、獣医としての仕事をしただけだよ。」
キッチンから戻ってきたお母さんが浅見秀人の対面に座る。
「お父さん、お母さん。今日は私と秀人から大事な話があります。」
「僕と由香里さんの結婚をお認めいただけないでしょうか。」
「『君に娘はやらん!』」
お父さんの言葉を聞いた由香里と浅見秀人は固まっている。
「…なんて僕が言うと思う?笑」
少し間をおいてお父さんがそう言うと、由香里と浅見秀人は一気に脱力し、お母さんはお父さんの肩をバシンと叩いて「今は茶化す場面じゃないでしょ!」と怒っていた。
「ちょっと、お父さん!秀人に謝って!」
「そうよ、あなた!」
「あ、いえ…。僕は謝っていただかなくても…。」
「秀人くん、大変失礼いたしました。すみませんでした。由香里をどうぞよろしくお願いいたします。」
「私からも由香里のことお願いしますね。」
「ミャウ!(あたしはどうなるの?!)」
「あら。ルナが不安そうね。秀人くん、由香里だけでなくルナのこともよろしくね。」
またしてもお母さんにあたしの気持ちが伝わってる?!代弁ありがとうございます!
結婚の挨拶のあともお父さん、お母さん、由香里、浅見秀人の楽しげな会話が続き、ミルクも飲み終えてしまって退屈だったあたしはふかふかのペットマットでお昼寝した。あぁ、平和だなー。
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