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7 慰める仔猫
さらに1ヵ月ほど経った。由香里が久々に休日に朝から出掛けた。と思ったら昼前に帰ってきた。
「あら、由香里。お帰り。これからパスタ茹でるんだけど、由香里も食べる?」
「…。」
「由香里?」
「…要らない。」
そう答えた由香里は明らかに元気がなかった。あたしが由香里を元気付けよう!
ヨロヨロと階段を昇る由香里にあたしはすぐに追いついた。由香里が部屋の扉を開くと同時にあたしは由香里の足元をスッとすり抜けて由香里の部屋のラグの上に座った。
「ミャーン!(あたしと遊んで元気になろう!)」
「ルナ…。」
由香里はあたしを抱き上げて頬ずりした。
「ミャー。(遊ぼうよー。)」
「私のこと慰めてくれるんだね…。うぅっうっうっ…。」
慰めてほしいのね!由香里が泣き出した。
「ミャー。(泣かないでー。)」
あたしは由香里の手をペロペロ舐めた。一応慰めてるつもり。
「うぅぅっ…秀人ぉー!」
浅見秀人のせいなのね!あたしは由香里の腕の中から飛び出して、由香里を元気付けようと由香里の周りをぴょこぴょこと駆け回り、跳ね回った。
「ふうぅぅっ…うぅぅぅ…。」
由香里がラグに突っ伏してさらに激しく泣き出した。暫くの間、あたしは由香里の手を再びペロペロ舐めたり、鼻先で由香里をツンツンつついたり、由香里の身体にあたしの身体をスリスリと擦り付けたりを繰り返した。由香里、そんなに泣かないで…。明日はお目々が腫れて大変よ?
由香里が少し落ち着いてきて、体を起こした。そして由香里はあたしの方を向いて手を伸ばした。由香里があたしの頭から顎に向かって顔の輪郭に沿って優しく撫でる。
「ルナ、そばにいてくれてありがとうね。」
そう言って由香里はまたラグに体を横たえ、あたしを撫でていた手は掌を上にしたまま落ちた。あ、これはいつも由香里が「お手」とか言ってたやつかな?
「ミャ。(はい、お手。)」
あたしは由香里の掌にあたしの手をちょこんと置いた。
「え?!今『お手』したの?!すごーい!あはははっ!ルナは賢いねぇ!」
「ミャーン。(あたし、やれば出来る子なの。)」
由香里はあたしを撫で回した。由香里の笑顔が見られて良かった。こんなことで元気になってもらえるなら、あと一回くらい、「お手」してあげても良いかなー。
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