男死山

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 僕と男を乗せた車が走り出した。運転席にすわる男は、器用に片手でハンドルを操作している。田園風景が前から後ろに流れて行って、山……男子山がどんどん近づいて来る。 「男子山は、実は男死山なんだ」 「男が山に入ると死ぬから……?」 「ああ、そうだ」    男はニヤリと笑って 「じゃあ、何でそんな怪談が生まれたと思う?」 「え?」  さすがに、僕はそっち方面に詳しくないのでいきなり聞かれても。 「男死山では、幻覚作用のあるガスが発生するんだ.」  ハッとして口を押さえる。甘くて臭い……あの匂い。 「はは、やっぱり! あのガスを嗅いだな。普通、あの山に登るときはガスマスクをするんだがな。お前さんは運がいい」 「ガスマスクを……ってことは、あれは毒なんですか!?」  冷や汗が流れた。指先が冷たくなる。 「いいや、男死山のガスに毒性はない。だが、淫夢を見せる」 「えっ!?」 「はっは! 赤くなんなよ。さてはお前さん、そーとーエッチな幻覚を見たな」 「か……からかわないでください!」 「ここからが、この話の面白いところだ。ガスによる幻覚で淫夢を見た男は、自家発電をしようとして、木の洞にチンコをつっこんでしまうのさ!」 「はぁ……」  そういえば、あの山には木がいっぱい生えていたな。しかも、すべての木にちょうど男性器がぴったり入るくらいの洞があった。まさか……! 「そう。気づいたようだね君ぃ。木の洞の中は、天然の神経毒で満たされているのさ! んで、チンコをつっこんだらチーン♪とお陀仏!」 「じゃあ、もしかしてウサミ君はもう……」  男は、少し憐れむような顔をした。 「ああ、今頃は松茸の苗床だろうさ。心中お察しするよ」
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