男死山

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「わわわ! 霧が濃くて何にも見えないよウサミ君! ……って、ウサミ君どこ!?」  ウサミくんとはぐれてしまったみたいだ。ワタヌキの額からはだらだらと汗が流れた。 「どうしようどうしよう」  ガタガタ震えながら爪を噛む。こういうときはどうするんだっけ? あわてずにまず自分のいる位置を地図で確認して……。 「あっ!」  地図アプリを立ち上げようとして、手がすべってスマホが地面に落ちた。そのまま、斜面を崖に向けて転がって行ってしまった。待って! 追いかけて、転んだ。 「ぎゃあああ!」  しばらく木の根のまとわりついた地面を転がって、大きな木に体をぶつけて止まった。 「うう……いてて……ひっ!」  ワタヌキは頭を押さえて起き上がると、目の前の崖を見て震える。落ちたスマホがはるか遠く下に見えた。全身から汗が吹き出し、あわてて左に目をそらすと何か、影が動くのを目の端でとらえた。 「ウサミ君……?」    
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