2人が本棚に入れています
本棚に追加
「わわわ! 霧が濃くて何にも見えないよウサミ君! ……って、ウサミ君どこ!?」
ウサミくんとはぐれてしまったみたいだ。ワタヌキの額からはだらだらと汗が流れた。
「どうしようどうしよう」
ガタガタ震えながら爪を噛む。こういうときはどうするんだっけ? あわてずにまず自分のいる位置を地図で確認して……。
「あっ!」
地図アプリを立ち上げようとして、手がすべってスマホが地面に落ちた。そのまま、斜面を崖に向けて転がって行ってしまった。待って! 追いかけて、転んだ。
「ぎゃあああ!」
しばらく木の根のまとわりついた地面を転がって、大きな木に体をぶつけて止まった。
「うう……いてて……ひっ!」
ワタヌキは頭を押さえて起き上がると、目の前の崖を見て震える。落ちたスマホがはるか遠く下に見えた。全身から汗が吹き出し、あわてて左に目をそらすと何か、影が動くのを目の端でとらえた。
「ウサミ君……?」
最初のコメントを投稿しよう!