男死山

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「それにしてもまったく。薄気味悪いところだぜ」  周りを見渡しながら、ウサミはつぶやいた。  地面には蓮コラのようにびっしりと松茸が群生している。周りは大きな木に囲まれており、しかも気持ち悪いことに、すべての木には直径三cmほどの(うろ)がある。まるで、口を開けた人間の群れに見られているみたいだぜ。 「しかもこの変なにおい」  風に乗って運ばれてくるこの、何とも言えないような香り。胸がむかむかしてくるような、下腹がきゅっとなるような変なにおい。ずっと嗅いでいるとおかしくなりそうだ。  まぁいい。どうせ、霧が晴れるまでの辛抱だ。傍らに置いた籠を手繰り寄せる。山を下りて、この大量の松茸を売れば、俺とワタヌキ、二人で一年は遊び暮らせる。  もう少しの辛抱だ。もう少し。もう少し。
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