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「ここどこ~? うう……やっぱり動くんじゃなかったぁ~」
目元の涙をぬぐいながら、ワタヌキは霧の中を歩いている。一つ所にいると、木々に見張られているような気がして気分が悪いのだ。それに、変な香りがずっと漂ってきて、気が可笑しくなりそうだった。
「ウサミ君、ウサミ君」
親友の名前を呼ぶ。彼とは幼稚園の頃からの付き合いだ。そういえばずっと、一緒だった。というよりも、いつも僕が彼の後を金魚のフンのようについて回っているのだが。
今回も、この山で松茸を取ろうって言いだしたのもウサミ君だった。僕は、やめようって言ったのに……。
だって、この山……男子山は曰くつきの山だもの。
でも、ウサミ君についていかないという選択肢は僕にはなかった。だって、僕は昔っから気が弱くて引っ込み思案で、彼以外に友達がいないから。
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