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男子山。この山に入った男子は、生きて下山することはできないという。なんでも、この山の神は女で、付き合っていた男がいたが山賊にその男を殺されてしまい、狂ってしまったのだか。
それで、山に入って来る男はみんな自分の恋人だと思い込んで、あの世に連れていこうとするのだとか。
バカバカしい。怪談話などくだらない。フン! とウサミは鼻を鳴らした。
だが、正直この匂いはキツイ。
「げほげほ……ぅぇ……ぐっ……おぇぇええ」
びちゃびちゃと、群生する松茸の上に嘔吐物をまき散らした。もう、腹の中のものはすべて吐き出した。胃がキリキリする。
この匂いがヤバイ。胸焼けしそうな臭くて甘ったるい香り。生暖かい風がウサミの汗で張り付いた髪を撫でた。
そうだ、風下なのが悪い。風上に行こう。そうしたら、気分も多少マシになるはずだ。
ウサミは、松茸が大量に入った籠を背負い、霧で真っ白な山の中を、ゆっくりと山頂に向かって歩き出した。
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