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1話「俺、魔法使いになりたいんです!!あと、結婚して下さいお嬢様!!」
「お嬢様。聞いて下さい。
俺、魔法使いになりたいんです。」
アルテアの従者であるスピロは唐突に、とんでもない爆弾発言を投下した。
後ろに束ねた少し長い赤茶色の髪。瞳は濃緑色で、目は大きい。
綺麗に並んだ歯。
体格の良さに体の手足のバランスの良さ。
長い足に、細い腰つき。
騎士風にアレンジされた従者服がよく似合う。
これはいわゆる神様が、スピロの配合を完璧にしたとしか思えない造形。つまり稀なレベルのイケメンだ。
魔法使い。
それはこの国ではほとんど禁忌扱いされきた存在だが。
告白を受けたアルテアは自身の銀色の前髪をかき上げ、少し冷めた瞳でスピロを見上げた。
「はあ。スピロ。
貴方まさかそんな理由で、皇室騎士団に入るチャンスを断ったの?」
「そんな理由だなんて!ひどいです!
お嬢様!
俺を傷つけた責任を取って、今すぐ結婚してください!!」
どさくさに紛れてスピロはアルテアに求婚を迫る。
確かに普通の令嬢なら、こんなイケメンに迫られればあっさりと受け入れてしまうかも知れない。
だがしかし——————。よく晴れた夏前の午後。騎士生訓練所の隅。
壁近くの大きな大木の側に押し攻められているアルテアは、深く溜息を吐いた。
「スピロ。貴方が冗談を言っていることは私も分かっている。ただ……」
「冗談だなんて、冗談じゃありません!!」
「!?」
「お嬢様!俺はいつだって本気ですよ!
本気で魔法使いになりたいし、本気でお嬢様と結婚したいんです!!」
「はあ。分かった、分かった。」
再び溜め息を吐き、アルテアはスピロの厚い胸をぐいっと押し返した。
これがスピロの通常運転だと知っているアルテア。躱すのも慣れたものだ。
ここはアルテアの実家———ペトラキス侯爵邸の敷地内である。
ペトラキス侯爵家は代々、優秀な騎士を育成・輩出してきた名家である。
父もかつて有名な皇室騎士だった。
が、スピロは元々アルテアの専属従者。
主にアルテアの身の回りの世話をする。
騎士とは縁遠い人物のはずだった。
その彼がどうして皇室騎士にスカウトされたのか。

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