白い墓

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目を開けると真っ白な空間にいた。 「ひとり息子がいなくなった。 高田くんが見つけた銀色の箱は、宇宙船でね。 カスタマイズされたときの不備で、事故が多発したんだ。 それからずっと探していた。 そして息子は地球に落ちたと判明した」 「それを、俺がみつけた......?」 「だから私は地球人の姿をした高性能ロボットに乗り、地球へ来たんだ」 「高性能ロボット?」 高性能ロボットみたいな正確な仕事のこなし方、敬語を使わない。 人間味や感情の乏しい淡々とした振る舞い、突拍子もない質問。 それって、ほんとにロボットだったからか。 「本体は腹部にあるんだ、私たちは君たちよりサイズが小さいからね」 と、後藤さんは自分の腹を指差した。 「高田くんにはね、かすかに息子が生存していたときの匂いがあった。 どうして君にそれがあるのかわからず。 君に近づくために会社の同僚になってみたんだ。 ようやくすべてが飲み込めたよ」 呆然とする俺へと後藤さんが向かい合ってきた。 そして、俺の両手をつかむと、そっと持ち上げて、自分の両手と合わせて、 額をつけてきたた。 まるで祈るかのように......。 「高田くん......ありがとう、ほんとうにありがとう......!! 君はこの手で、私の息子を弔ってくれたんだね。 あの子の魂は、広大な山の中で眠っているんだね」 ふと込み上げてきて......俺も泣きそうな気持ちになってきた。 「だけど、息子を弔ったせいで、父親と大変なことになって、  顔に傷までできてしまって......申し訳ないとも思っている」 「いや、それは、それは......俺ら親子が不器用すぎただけですよ! それに......俺が弱すぎるんです。 母ちゃんと爺ちゃんの死を乗り越えられず、ヤケになって......。 俺、俺、自分のことばっかりで.......」 ついには俺は泣きだした。 「社長だって、息子さんを亡くして辛いのに、俺、冷たいこと言って......」 後藤さんが手を離してきた。   そして微笑んだ。 よくよく考えると、後藤さんの笑顔は初めてみた。
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