白い墓

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俺は正式に退職してから、愛媛の実家に帰省した。 休日なので父がいた。 「墓参りしてくる」とだけ告げ、手桶と線香と花束を持って山を登った。 田舎は墓地ではなく自身の土地の墓があるもので、うちもそうだ。 まずは先祖と母親の墓前に水をかけ、花を添え、線香を立てて手を合わせた。 それから、後藤さんの息子さんの墓だ。 俺は山の上にある実家の墓の裏側に、異星人の遺体を箱ごと埋めたのだ。 敷地内の墓石の裏の、舗装されていない土の中へと。 そして立てた運動靴はボロボロのまま、まだあった。 黒く汚れた古い靴は引き抜いてビニール袋に入れて回収し、大理石の 白い石を立て、土を盛って固定させた。   そして目を閉じて手を合わせた。 見知らぬ青い星で死んだ子の為の、白い墓へと。  「あんたがいなくなってから、あんたの親父さんは......。 ここまで探しに来てくれたんだぜ? 良い父親だよな」 と、語りかけながら.......。 俺は立ち上がり、海まで見渡せる景色を眺めた。 これが、後藤さんが守ってくれた星なんだな。
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